1.川崎の片隅に聳えるマンモス団地を訪問
川崎駅から歩くこと約15分。
駅前の喧騒が静まり、閑静な住宅街が広がってきたと思うと突如として現れる巨大団地が今日の目的地の「河原町団地」だ。

河原町団地は、15棟・約3600戸から成る大規模団地で、竣工は1969年。
設計を担当したのは、建築家の大谷幸夫。丹下健三の右腕としても知られ、戦後建築史に名を刻んだ建築家である。
この団地が建てられた1960年代といえば、1964年の東京オリンピックをはじめとする国家プロジェクトが終わり、高度経済成長による都市化が益々加速していた時代でもあった。
丹下研究室が掲げた都市計画理論を大谷自身のフィルターによって実現する絶好の機会がこの団地であった。
2.工場跡地に生まれた立体都市
この団地の敷地は日東製鋼の川崎工場跡地であった。
団地の入口には「さいわい緑道」という名の細長い緑道があるが、この緑道も川崎河岸駅への貨物線跡地だ。

河原町団地で計画された住戸は3600戸。実に15000人もの住民が住まうことを想定しているというから驚きだ。
広大な敷地に幾つかのグループに分かれつつ散らばる各棟は、高密度に住戸が集積しつつ、それぞれが均質な住棟ではなく、方位、通風、日照を考慮し、計画的にずらされている。
3.集合住宅における造形の極地 逆Y字型住棟
団地の中核部に位置する「逆Y字型」住棟は、河原町団地の象徴であると同時に、日本の集合住宅建築史におけるひとつの到達点でもある。

この独特な構成は、限られた敷地に多くの住戸を確保しつつ、低層住戸にも日照を確保するために生まれた。
中央の巨大な吹き抜け空間は光と風を通すセミパブリックなスペースをつくりだしている。

この棟の足元に立つと、宗教建築あるいは近未来の宇宙船のような不思議なスケール感を実感できる。
建築が持ちうる空間的ドラマ性を、団地という形式の中でこれほど追求した例は極めて稀である。
4.リズミカルでダイナミックな巨大団地が面白い
外部にまわると低層部分はコートハウス型の集積となっているのもユニークだ。
プライベートな中庭が連なるように住戸が配置されることで、集合住宅でありながら戸建的な感覚が取り込まれている。

バルコニーは一直線につながるのではなく、住戸ごとに独立し、張り出しや奥行きを持たせることでリズムを生んでいる。
こうしたデザインは3600戸という膨大な「量」を、豊かさのイメージに変換させているように思う。
集積することで生まれる変化と複雑性、しかしその根底にある統一性。
河原町団地では高度経済成長期の一つの極致が団地として現れているように思える。
5.高度経済成長によってつくりだされた夢の行先
後年に設置された耐震補強の構造体も、元の意匠に違和感なく溶け込んでいる。
補強構造は建物の美観を損ねがちだが、ここではむしろメカニカルで力強いアクセントとなっている点も面白い。

竣工から半世紀以上が経過し、団地全体は高齢化・空室化といった問題にも直面している。
一方で住棟の配置、形状、光と風の通り道、さらには構造体の見せ方など、この団地が持つ建築的・都市計画的魅力は今見ても全く色褪せていない。

河原町団地には、かつて日本が夢見た団地建築の魅力が息づいていて、今も尚訪れたものを魅了してやまない。
【河原町団地】
オススメ度:★★★★
住所:神奈川県川崎市幸区河原町
アクセス:川崎駅から徒歩約15分
予算目安:0円
※記事執筆時点での情報
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