1.東京の地下に佇む異形の駅、飯田橋駅
東京・飯田橋。その名を聞いて、まず思い浮かべるのはビジネス街か、神楽坂の風情ある街並みか。
しかしこの街の地下にある「都営大江戸線 飯田橋駅」は、あまりにも異様な姿である。

そこには、まるで未来都市から転送されてきたような謎のフレームが階段の頭上に突如として現れる。
その名も「ウェブフレーム」。

緑色の金属が複雑に絡み合う姿は、もはやアートか構造物かの区別すら曖昧で、不穏な空気すら漂う。
初見では不気味さすら感じるこの異物の正体とは何なのか。
2.コンピューターデザイン建築の先駆け
この駅のデザインを手がけたのは、建築家・渡辺誠だ。
彼は、コンピュータ・プログラミングを駆使した建築デザインを日本でいち早く取り入れた異端の存在だ。
2000年に完成した飯田橋駅は、彼の初期の代表作である。

「ウエブフレーム」は、単に奇抜さを狙ったものではない。
土木的な制約の多い地下鉄駅において、「天井を高く見せつつ、コストは抑える」「単調な通路に空間の変化をつくる」「照明などの設備も条件通り設置する」といった難題に対して、アルゴリズムにより生成された形状で解決を試みているのがユニークな建築だ。
3.さりげなくチャレンジング
飯田橋駅の魅力は、このウエブフレームだけにとどまらない。
例えば地下のホームの天井部分に注目してみる。

中央の上部は、一般的な地下鉄のホームでは設備を入れるために天井を張って架構を隠してしまうのだが、ここ飯田橋駅では工法や設備の位置を工夫して広がりがある空間をつくっている。
是非乗り換えの際に他の地下鉄のホームと比べてみてほしいが、飯田橋駅では他のホームにはない広がりと躯体の持つ美しさ、力強さが同居している。
4.地上の換気塔にも異変あり
駅の地下空間だけでなく、地上部分にもその異質さはでている。もうひとつ注目すべきポイントは、地上にそびえるこちらの巨大な換気塔だ。

一見すると昆虫の羽根のような形をした構造物だが、これもまたアルゴリズムによる自動設計によって導き出された形状である。
美しさと機能性、そして構造合理性を極限まで突き詰めたその姿は、むしろ「実験体」に近い。

しかし面白いことに、駅の入口を観察していても都心の真ん中に突如現れるこの異形の塔に気づく者は少ない。
5.世界にひとつの「実験場」としての駅
飯田橋駅は、単なる交通インフラではない。ここは「建築とコンピュータの融合」を試みた初期の実験場であり、アルゴリズミック・デザインの記念碑的な存在である。
地下鉄という公共性の高い空間に、建築家とコンピュータが共に紡ぎ出したデザインが刻まれているのだ。

今でこそコンピュータを使ったデザインは当たり前に見聞きするのだが、この駅は間違いなくその源流に位置するのだ。
現在の建築が通過してきた大きな礎が、あの奇抜とも思えたフレームに込められていると思うと、さらにこの駅のデザインが興味深くみえてくる。
【都営大江戸線 飯田橋駅】
オススメ度:★★
住所:東京都文京区後楽2-1
予算目安:0円
備考:2001年度グッドデザイン賞 金賞
2002年日本建築学会賞 作品賞など受賞多数
※記事執筆時点での情報
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