地中に広がる地下神殿「首都圏外郭放水路」の深層へ潜入

1.地下数十メートルに眠る異形のインフラ

今日訪れたのは埼玉県春日部市。郊外の風景が広がるこの土地の地下深くに、世界最大級の地下放水路「首都圏外郭放水路」が存在することをご存知だろうか。
全長6.3km、地表から50m下に設けられたこの施設は、中川、倉松川、大落古利根川など複数の河川の氾濫を防ぐために建設された。
大雨の際には濁流を取り込み、江戸川へと導く役割を担っている。

このプロジェクトが着工したのは1993年。9年後に一部供用が始まり、2006年に全体が完成。
本来は人目に触れることのない災害対策のインフラだが、その内部構造があまりに異質で荘厳なため、「地下神殿」としてSNSやテレビでも話題を集めている。

2.選べるコースで異空間見学

この施設は事前予約制で一般見学が可能である。
見学コースは定期的に変わってアップデートさらているが、目的や興味に応じて選べるのが魅力だ。

最も人気があるのは「地下神殿コース」。
1時間弱という短時間ながら、高さ18mの柱が林立する調圧水槽と巨大な第1立坑を見学できる。

よりディープな体験を求めるなら、70mの立坑に潜るコースやポンプなどの機械設備を間近で見るコースもある。

いずれのコースも、日常とはかけ離れた空間を体験できる。
私も過去数回この施設を訪れているが、いずれのコースも迫力満点の体験ができる。

3.アクセスにひとクセある現地への道のり

見学の受付は「龍Q館」という施設で行われるが、最寄駅からのアクセスは決して良好とは言い難い。
南桜井駅からバスやタクシーを利用する必要があり、初訪問の場合は事前にルートを確認しておくことをオススメする。

施設の外観は意外にも無機質で控えめな印象だが、その地下に広がる空間とのギャップが、むしろ訪問者の期待感を煽る。
見学までの待機時間には、龍Q館で展示されている模型や映像映像を通じて、放水路の仕組みや役割を学ぶことができる。

4.地下神殿に足を踏み入れる瞬間

受付を終えた後、見学者は案内に従い施設の地下へと降りていく。

階段を降り切ったその先に待つのは、コンクリートの巨柱がずらりと並ぶ「調圧水槽」だ。
高さ18m、幅2m×7m超の柱が59本、整然と並ぶその光景は異様のひと言に尽きる。

無機質なコンクリートが生み出す圧迫感と静寂は、どこか不穏な空気すら漂わせている。

この空間の本来の目的は、流入した水の勢いを弱めることで江戸川への排水をスムーズにするというもの。
だが、実際にその場に立つと、本来の意図など忘れてしまうほどの迫力が迫ってくる。
その本来の意図あってこそのこの非常識ともいえるスケールの空間がつくられたということが、逆説的で面白い。

5.荘厳で神秘的な空間

調圧水槽の奥には「第1立坑」と呼ばれる巨大な円柱空間がある。直径30m、深さ70mという途方もないスケールだ。
上部の通気口から差し込む光は神秘的で、どこか神殿の祭壇を思わせるような神々しさすらある。

やはり面白いのは、これらの構造物はすべて洪水制御という必要性と機能性から生まれた構造であり、美しさは副産物に過ぎないということだ。

足元は濡れており、時に滑りやすくなる。
ちょっとした緊張感もこの空間での体験に必要な要素だ。

地上に戻り、のどかな芝生の広場が広がっているのを目にして、現実感が戻ってくる。
だがその奥深く、数10m下には、いまだ水を待つ巨大な空間が静かに息を潜めている。
首都圏の災害を支える荘厳で神秘的な姿は、その圧倒的な空間感覚と共に心に留まり続けている。

【首都圏外郭放水路】
オススメ度:★★★★★
住所:埼玉県春日部市上金崎720(龍Q館)
アクセス:南桜井駅から徒歩約40分(バスもあり)
予算目安:1000円~(コースによる)
備考:要事前予約
公式ウェブサイト:https://gaikaku.jp/
※記事執筆時点での情報

B級スポット・珍スポットランキング
B級スポット・珍スポットランキング
にほんブログ村 旅行ブログ 珍スポット・B級スポットへ
にほんブログ村

↑珍スポット・B級スポットのブログランキングに参加しています。よければクリックして応援してもらえると嬉しいです。

タイトルとURLをコピーしました