1.長野の山奥で体験する文人の記憶
長野県茅野市。
送迎バスに揺られながらうっすらと雪の積もった山を登った先に現れるのが今回の目的地である「蓼科親湯温泉」だ。

この一帯は戦国時代には武田信玄が兵を癒したという隠し湯の地。
後の時代には、太宰治や小津安二郎といった作家や映画人たちが足繁く通ったことでも知られる。

宿へ向かう道中には、小津が使っていた山荘「無藝荘」が今も残る。
冬季は非公開だったが、雪の中にぽつんと佇む姿だけでも、文化の匂いが漂っていた。
2.ラウンジに広がる本、本、本
受付を通るとラウンジで宿の説明を受けるのだが、ここで視界に飛び込んでくるのは壁一面の本棚。
蔵書数は驚きの3万冊だ。

文学全集や詩歌、児童書から理工系の専門書までジャンルは多岐にわたる。
とくに本好きの心をくすぐるのが「岩波文庫の回廊」と呼ばれる通路だ。老舗旅館の細い通路に本棚が溶け込み、知の迷路のような空間が広がる。

雪で閉ざされる温泉宿に籠って本を読み耽けたい。そんな思いつきで始まった今回の旅だが、すでに興奮して寝れそうにない。
3.文豪モチーフの部屋で時間を忘れる
今回の宿泊では、館内で特に人気の高い文人がテーマの客室に宿泊した。
どの文人の部屋になるかはチェックインまでわからない仕組みだが、案内されたのはアララギ派歌人・島木赤彦をイメージしたセミスイート。

暖炉の火がパチパチと音を立て、窓の外にはうっすらと雪が積もる。
文学をテーマにした部屋ではあるが、近年リニューアルしたこともあって非常に清潔で過ごしやすく、宿として申し分のない部屋だった。
4.信州の素材でいただく滋味の品々
この日の夕食は地元産の食材を軸に構成された和フレンチ「蓼科 山キュイジーヌ」。
信州牛のステーキを中心に、発酵食品や季節の野菜が美しく盛られている。

りんごジュースの飲み比べセットもあり、土地の味を五感で楽しめる演出が嬉しい。
ちなみに朝は蓼科 山ごはんと名づけられた朝食を頂いた。

種類豊富な小鉢を少しずつ味わいながら、窓の外の雪景色をぼんやり眺める時間が贅沢だった。
5.湯と本に包まれる宿を満喫
湯処にもこだわりがあり、大浴場はなんと畳敷き。
浴場に入った瞬間、床がふわりと足を受け止める感覚はなかなか新鮮だ。貸切露天風呂にも入り、凍てつく外気のなかで温泉の熱に包まれる体験は、まさに山の中のご褒美だ。

夜は再びラウンジへ。
併設のバーでカクテルを手に取り、全集の一節をめくる。

ここは日常からすこし離れ、静かに本と向き合うための場所だ。
アクセスは少し手間だが、ここだから得られる極上の体験。機会があれば皆さんも是非味わってみてほしい。
【蓼科 親湯温泉】
オススメ度:★★★★
住所:長野県茅野市北山蓼科高原4035
アクセス:茅野駅からバスで約30分
予算目安:20000円~40000円
公式ウェブサイト:https://www.tateshina-shinyu.com/
※記事執筆時点での情報
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