1.大宮駅西口に聳える黄金の異物
今日訪れたのは埼玉県の中心地、大宮。
大宮駅の西口をでて程なく歩いた所に、ロケットの形をした不思議な建物があったことを思い出し、まだあるか分からないまま久しぶりに訪問してきた。

大宮駅の西口をでて、ペデストリアンデッキを渡って歩くこと5分。
ショッピングモールやオフィスビルが立ち並ぶ表通りを少し外れると、異様なシルエットが目に入る。
ビル群の隙間から顔を覗かせる異様な建物を見た瞬間、まだあった!と思わず小さな声が漏れた。

このビルは通称「ロケットビル」と呼ばれる。
まさにロケットのような外観を持ち、全身をギラついた金色に包まれている。
黄金の円筒が、空へと突き出るように建ち尽くしているその姿にニヤニヤが止まらない。
2.ロケットビルとの出会い
私がはじめてこのビルに出会ったのは、大宮で行列のできるラーメン店「つけめん102 大宮店」を訪れたのがきっかけだった。
つけめん102は2005年に千駄ヶ谷で創業したつけめんTETSUの系列店だ。102は焼けた石をスープに入れる独特のスタイルとクセになる独特の味わいの人気店であったが、102の行列に並ぶとちょうど斜向かいにこのビルがみえるのだ。

TETSUは創業店の千駄木店はだいぶ前になくなり、大宮の102も2024年に閉店してしまったが、この異質なロケットビルは今日も大宮の街に聳え立っている。
3.バブルの絶頂期に造り出された奇形建築
このロケットビルが建てられたのは平成がはじまった1989年のことだ。
建物の設計を手掛けたのは自身も建設会社を経営していた山口伸廣氏。
バブル絶頂期に建てられたビルは当初は美術館でもあったようだが、現在はテナントビルとして活用されている。

その突き抜けたセンスは、一周まわってカルト的な魅力を放っている。
中の機能は変わっているけど、黄金を纏った外観のビルは平成という時代を超えて今なおその姿を露わにしている。
4.総資産200億→0→復活!?
30数年前にこのビルの設計を手掛けた山口伸廣氏も中々に面白い人物だ。
山口伸廣氏は若い頃は芸術家を志し、20代から建設会社を経営していたやり手の実業家であった。
ロケットビルを設計した40代の頃には総資産200億円を超え、実業家として大成功。しかし数年後に会社乗っ取りにあって資産ゼロに。
その後、再び起業して復活、現在は幾つもの会社を経営しつつ、逆境コンサルタントとしても活躍するという破天荒な人生を送っている。
山口氏は他にも湯河原で人間国宝が作陶した茶碗で抹茶が頂ける「人間国宝美術館」や世界的なアートコンペティション「アートオリンピア」を創設したりもしている。

何年か前に大宮駅の東口にバスケットボールの巨大な描かれた建物があるな、と思ったらこちらの建物も山口氏が手掛けたものであった。
アートヒルズと名付けられた建物は2017年に竣工したもので、よく見ると本物のバスケットゴールが備え付けられていた。
5.見た者の記憶に残るランドマーク
ロケットビルについて、地元の複数人にインタビューしてみた。
全く知らないという人がいる一方で、幼いころから「あれは何だろう?」とずっと気になっていたという話や、「あれが何かは知らない。けれど確かに知っている」という話まで、人によって様々なリアクションが聞けたのが面白かった。
誰が見てもただ事ではない形状。だが、その突飛さは何らかの形で、記憶の奥に爪痕を残す。
かく言う私も記憶の奥底にこのビルの存在が残り続けていた人のうちのひとりでもある。

再開発が進む大宮駅西口エリアにおいて、ロケットビルは「取り残された」存在であると同時に、「消せない記憶」でもあり、愛すべきランドマークでもある。
街が洗練されていくほどに、このビルの異物感は益々磨かれ、輝いていくのだ。
【ロケットビル】
オススメ度:★★★
住所:埼玉県さいたま市桜木町2-328-2
アクセス:大宮駅から徒歩約5分
予算目安:0円
※記事執筆時点での情報

B級スポット・珍スポットランキング

にほんブログ村
↑珍スポット・B級スポットのブログランキングに参加しています。よければクリックして応援してもらえると嬉しいです。