1.湾岸に建つインパクト大の集合住宅
東京・潮見の湾岸エリアに、ひっそりと異彩を放つ集合住宅がある。その名も「○□△ハウス」だ。

子どもが遊ぶ図形パズルのようなネーミングだが、実際に建物の上部には巨大な円、四角、三角が突き出していて、集合住宅の一部としてしっかりと機能しているのが面白い。

潮見の角地に建つ建物は、敷地の形に沿って緩やかにカーブしながら立ち上がっており、その上に例の図形のボリュームが乗っている。
昼間は近隣のビジネスマンやトラックが通り過ぎるだけの殺風景な一角だが、この建物だけはどこか周りの風景から浮き上がってみえる。
2.天才建築家がデザインしたポストモダン建築
この不思議な建物の設計を手掛けたのはポストモダン建築の鬼才・石井和紘(かずひろ)氏だ。
この建物が建てられた1987年は、こうしたポストモダンと呼ばれる建築が隆盛を極めた時代でもあった。
石井和紘は戦時中の1944年生まれの建築家だ。1967年に東京大学を卒業後、30代前半で自身の設計事務所を立ち上げ、過激で斬新な建築を発表して注目を浴びた建築家だ。

彼の作品は今もいくつか残されているが、私が好きな建築に横浜に建つ「同世代の橋」がある。
横浜の路地裏に立ち上がった建築は、六角鬼丈、石山修武、葉祥栄、伊東豊雄、長谷川逸子、安藤忠雄、高松伸といった石井と同世代の建築家の特徴が、石井の手にアイコニカルに引用されているなんとも変わった、しかし見れば見るほどに面白い建築だ。
3.現代日本の賃貸住宅を王宮にする
ポストモダン建築の特徴のひとつは引用であるが、石井によよれば、この○□△ハウスはフランスの世界遺産・シャンボール城を引用したものだという。
16世紀に建てられ屋根には様々な塔が主張する豪華な王宮の設えを、江東の集合住宅で再現しようというのは常人の発想ではない。

この建物のフォルムは、多分に「見られること」を意識してつくられているように思う。
近くを通る首都高速や湾岸の公園からも、この異様な図形群はよく見える。
意識しないとスルーしてしまいそうだが、一度気づくと2度見せずにはいられないインパクトが面白すぎる。
4.ファミリーマートでお買い物
○□△は、いつの頃からか1階にファミリーマートがはいっている。

集合住宅ということで内部は堪能することはできないが、ファミマなら見学し放題だ。
本当は屋根の○□△に登りたい所だけれど、贅沢はいえない。
ファミマの内部も面白くて、例えばアール状にカーブする建物の外観に合わせて天井の照明がアール状に配置されていたりする。

訪れた際は是非店内を見渡して、自分なりの珍なるものを見つけてみてほしい。
5.過ぎ去りし時代が生み出した唯一無二の建築
○□△ハウスは、観光名所でも写真映えスポットでもない。
計算された奇抜さと狙われた違和感、バブル前夜の明るさ・楽観さを伴うこの建物には、普通では味わえない刺激がある。

長く見ていると角度や時間帯によって表情を変える建築になんだか愛着が湧いてくるのが面白い。

潮見の街に静かに聳える建築は、もう戻ることのない過ぎ去りし時代が生み出した唯一無二の建築だ。
【○□△ハウス】
オススメ度:★★★
住所:東京都江東区潮見1
アクセス:潮見駅から徒歩約5分
営業時間:コンビニは24時間
予算目安:240円(ファミチキ)
※記事執筆時点での情報

B級スポット・珍スポットランキング

にほんブログ村
↑珍スポット・B級スポットのブログランキングに参加しています。よければクリックして応援してもらえると嬉しいです。