1.大田区大森町で催されるちょっと不思議なお祭り
今回は東京都大田区で700年続く珍祭があると聞き、予定を合わせて参加してきた。
訪れたのは京急電鉄の大森町駅。閑静な住宅街が広がるこの街で毎年7月の第2日曜日に行われるのが今回の目的「水止舞(みずどめまい)」だ。

約700年前に始まったと伝わるこの行事は、東京都指定の無形民俗文化財にもなっている。
雨乞いの祭りは全国といわず世界各国でみられるだろうが、水止舞は読んで字のごとく大雨を鎮める祈りを起源とした祭りというのが特徴だ。
2.祭りの前の静けさだが・・・
祭りの起点となるのは大田区立大森第一小学校前の交差点だ。
祭りの開始は13時だが、前の予定が早く済んでしまったので12時には現地入り。
1時間早いとはいえまだほとんど人の姿はみられなく少し不安になる。
ここから程なく歩いたところにある厳正寺というお寺までの数100mが祭りのルートらしい。
下見を兼ねて寺院までの道を歩いていると、道端にはバケツや水槽が準備されている。

この時は、人も少ないし少し水をかけるくらいかな、と思っていたがその予想は祭りのスタートと共に大きく裏切られることとなる。
13時に近づくと先ほどまでの閑散とした街並みから雰囲気が一変。
数十人、いや100人は超える人々がわらわらと集まってくる。そして祭りのスタートと共にこの祭りの本気を知ることになる。
3.大人2人が藁に巻かれて水をかけられながら法螺貝を吹く祭り!?
この祭りではまず藁でぐるぐる巻きにされた男性2人が道路に横たわらされる。

そしてその藁に包まれた男性に向けてバケツいっぱいの水が次々と空へ放たれるのだ。
そして水を浴びた男性は法螺貝を全力で吹き、寺院に向けて引きづられるように運ばれていくのだ。
勝手にバケツは水溜で柄杓か何かを使うのかと思っていたが、バケツは両手で持ってぶちまけるカオスな状況。
もちろんバケツの水は綺麗に藁にだけかかって収まるわけはなく、観客へも降り注ぐ。

周囲から一斉に水が飛び交うため、道路にいると逃げ場はほぼなし。気が付けば、観客もスタッフも全員びしょ濡れとなる。
何故こんな奇怪な祭が生まれたかといえば、その起源は700年以上前の1300年代まで遡るという。
まず当時武蔵の国が大干ばつに見舞われた際に厳正寺の住職が藁でつくった龍像に祈祷し雨を降らせたと。
ここまではよかったのだけれど、今度は長雨が続き人々を苦しめる事態に襲われる。
そこで獅子の仮面を3つ作って「水止(しし)」として舞わせ、太鼓や法螺貝の音と共に龍神に雨がやむよう祈祷したというのが「水止舞」のはじまりだ。
4.数百年では変わらないプリミティブな感覚
祭りの中心にいると少し水が飛んでくるのレベルではないのだけれど、周囲からは悲鳴と同じくらい笑い声が聞こえ、子どもも大人も大はしゃぎ。

街中で豪快に水を浴びる体験は特別な何かを感じさせる。
バケツの水が空高く撒かれ、法螺貝の音が鳴り響く。そして後ろからは笛と太鼓を鳴らしながら獅子が通る。
一見するとかなり不思議な光景だが、このような祭りが何百年と受け継がれてきたことには驚きと共に感動すら覚える。
遥か昔の人が自然と向き合いながら祈ってきた歴史の延長線上に自分がいるという実感と共に、ずぶ濡れになりながら感じる清々しさと一体感がこの祭が続いてきた理由の一つなのだろう。

700年という長い年月の中で変わることとも多いのだらうが、同時に700年では変わらないプリミティブな感覚をこの祭は想起させてくれる。
5.境内では厳かな舞が始まる
引きづられること100m。
境内に用意された舞台まで引きづられると、第一部が終了する。

巻かれた藁は解体され、龍のように舞台上に広げられる。
そしてここから「水止舞」、つまり雨を止める舞が踊られるのだ。
先ほどまでのびしょ濡れの祭事は降り続く雨であり、その雨が止み晴れが訪れることでこの祭はフィナーレを迎える。

祭が始まる前は「なんでこんなことをするのだろう」と思っていたが、ここまでくると納得感と一体感がハンパではない。
最後はオリジナル手拭いまでゲットして、大きな満足感と共に祭りへの参加を終えることとなった。
これらのグッズも微力ながら祭りの継続の一助になってくれたら嬉しい。

演じる人、祈る人、支える人、見に来た観客。その全員が水浸しになる光景の奥に、700年受け継がれてきた祈りがある。
最初は変わった祭りだなと思っていたのに、帰る頃には「この行事がこれからも続いてほしい」と切に願った。
来年も参加するかは分からない・・・が、何年後、何十年後かにまたきてみたい珍奇で素敵な祭りであった。
【水止舞】
オススメ度:★★★★
住所:東京都大田区大森東3
アクセス:大森町駅から徒歩約8分
開催日時:毎年7月 第2日曜日 13:00〜15:00
予算目安:0円
備考:濡れるので注意
※記事執筆時点での情報


