1.地上からは見えずらい異世界への入口
上野駅から徒歩3分。人通りがややまばらな浅草通りを歩くと、目立たない歩道上に「古城」の看板が現れる。

看板自体は小ぶりで主張も控えめ。しかし、足元のタイルが妙にゴージャスなのが気になった。
入り口にはかなり古びているが「KOJYO」のサインが掲げられ、通行人を地下へと誘惑している。

そして階段にはステンドグラス調の光壁と重厚な照明が設えられている。
完全に時代が止まったような演出だ。この時点で、すでに普通の喫茶店ではないと感じる。
2.閉ざされた地下宮殿、半世紀の重み
階段を降りきった先に待っているのは、ヨーロッパの古城を模したような純喫茶空間である。
店名は伊達ではない。天井から吊るされたシャンデリア、壁一面に施された装飾、奥にあるステンドグラス風の照明に心を奪われる。

古城の創業は1963年。
今では貴重となった地下喫茶文化の生き残りであり、その内装の多くが開業当時のままだという。

奥にある壁面のステンドグラス照明はロシア・エルミタージュ美術館の「大使の階段」を模しているというが、ここが東京の地下だとは信じがたい。
ほの暗い照明の中で浮かび上がるステンドグラスは、どこか秘密結社の会合に使われそうな妖しさを纏っている。
3.店内に漂う昭和の雰囲気
純喫茶といえばレトロとかノスタルジーといったイメージがあるが、この喫茶には懐かしさを超えた異質な雰囲気を感じる。
店内には静かにクラシックが流れており、時間の流れが地上と切断されているかのようだ。

客層は常連と一般客と喫茶店マニアがそれぞれといった雰囲気。会話は少なく、それぞれがこの奇妙な空間を静かに享受している。
内装は著名な建築家やデザイナーが手がけたわけではなさそうだが、それがかえって独自性を生んでいる。
4.モーニングセットという入口の儀式
開店直後の9時、最初の客として入店。
選べるモーニングセットの中からCセット・ハムサンドと紅茶のセットを選択。価格は650円。奇をてらった要素は一切ない、ごく普通のサンドイッチだが、この空間で食べること自体がひとつの体験である。

常連らしき男性が「おはよう」と入ってくると、店員が笑顔で応じる。
地下空間に響く会話は、外界から遮断されたこの場所での唯一の人間的なやりとりだ。
具材も食器も昭和の雰囲気がそのまま提供される。ここでは、目まぐるしく飛び交う情報に疲れた現代人に向けて「変わらないもの」が提供される。
5.都市の裏側にある、もう一つの「上野」
この空間はそれ自体が「選ばれし者の居場所」のように感じられるのだから面白い。
モーニングだけでなくランチやおやつタイムにもピッタリだ。

上野の地下に、こんなにも濃厚でアンダーグラウンドな空間が存在していたことに驚く。
純喫茶 古城は、ただ「おしゃれな昭和レトロ」では片づけられない、都市の裏層に潜む魅惑の喫茶店だ。
【古城】
オススメ度:★★★★
住所:東京都台東区東上野3-39-10 光和ビル 地下1階
アクセス:上野駅から徒歩約4分
営業時間:9:00~20:00
定休日:日曜、祝日
予算目安:500円~1000円
※記事執筆時点での情報

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