1.閑静な住宅街に建つ異様な住宅
今日訪れたのは埼玉県の蓮田市某所。
埼玉県の中心地である大宮駅から3駅、駅前には住宅街、少し離れると田畑が広がるのどかな郊外の風景が広がるが、そんな風景の中に突如現れるのがこちらの「落書きの家」である。

駅からはだいぶ離れているのでバスを使って訪れたのだが、近くには中学校前、小学校前といったバス停がある。
実際部活帰りらしき学生もバスに乗っていた。
まわりの家々は特に変わったところのない典型的な田舎の風景なのだが、この場所だけは時空が歪んでいるような異世界感がある。
2.電波なお出迎えに期待が高まる
この黒いシルエットが落書きで埋め尽くされたこの家はかなり前からインターネットや雑誌などで話題となっていたようだが、実際に訪れてみるとまず、家の中から鳴り響く謎の放送の音に驚かされる。

何かのメッセージなのか、主張なのか分からないが、謎の放送が結構なボリュームで鳴り響いているのである。
まさに電波なお出迎えだ。
さらに2階に設置されたアンテナの一部が点滅しながら、警告のような光を放っているのも気になる。
家屋は外から内部が見える部屋も多く、一見すると廃墟のようにも見えるが、住民がいるらしい。
目視できる範囲で見かけることはなかったが、この家はれっきとした人の住まいらしい。

週刊少年チャンピオンで連載していた格闘漫画「刃牙」シリーズでは主人公範馬刃牙の自宅がちょうどこんな落書きだらけの家であった。
刃牙では街の不良達が、強すぎる主人公へのせめてもの反抗として、留守中の家の外壁に落書きをするという設定であったが、この家は家主自身がこの落書きを行っているというから、事実は漫画よりよほど恐ろしい。
3.様々な主義主張で埋め尽くされた家
落書きは、土地を囲う塀から建物の外壁までびっしりと書き込まれている。

この落書きは、どうやって書いたのか分からないような高所まで書き込まれている。
道路沿いの家屋の奥にある建物も同様の書き込みで埋め尽くされていて、もはやどのように受け取っていいか分からない。
書かれている内容も様々で、読み取れなあものも多いが「自民公明」「土地どろぼうポリ」といった政党や警察を批判するものもあれば、「アバラ切除」「脳切除」など医療や身体に関わるものも多い。

また、「紙くず」「株・配当金どろぼう」「1998年倒産山一証券」など、株や資産に関するものも多いのが特徴だ。
4.リアルタイムで更新され続ける落書き
こちらには「国家社会主義の80年」とあるが、戦後の日本の政治や経済の体制に対する何かしらの主張だと思われる。

80年という年数が気になって改めて数えてみると、今年2025年が戦後80年となる。
つまりこれらの落書きはリアルタイムで書き換えられているのである。
この家の色が黒塗りなのは、恐らく書いた文字を上から黒で塗り潰し、新しい文字で上書きしているからなのである。

そうした目線でみると「半世紀ぶりオリンピック」は1964年以来約55年ぶりに東京で開かれた2020年の東京オリンピック(開催は2021年)についてだろうし、意外と時事の事柄が反映されているのが分かる。
「証券会社を運用 投資できれば10兆円は稼ぐ」は、字面がこの順番で合っているかはわからないが、大言壮語なのか見果てぬ夢なのか。

数ある落書きの中で株やお金、証券会社に関するキーワードが特に印象に残るが、バブル経済やその崩壊を巡って家主に何かあったのか、想像だけがこだまする。
5.落書きの先に膨らむ想像
その他の書き込みを見てみると、例えば「2Fトイレ」は、もはや誰への案内なのか分からない。

「みんなオキロと夜中ばく音のバイク」は、夜中に爆音で走る地元の暴走族のバイクの描写だろうか。
書かれた文字はどこかポエミーで、リズム感があるのが憎めない。
「1983東京ディズニー」は途中で読めなく真意は分からないが、確かに1983年は東京ディズニーランドが千葉県浦安市に開園した年だ。

「夢と魔法の王国の扉」が開かれた1983年、それは日本が世界で一番輝き、成長していた時代。そしてその後日本はバブル経済に沸き、弾け、衰退していく。
この日常の風景と非日常の風景の狭間に立つと、何が正常で何が異常か、その境が実はどこまでも曖昧だということが一瞬だけ頭をよぎる。
家主はこれらの主張で何を伝えたかったのか。
それを理解し、共感することはないかもしれないが、この風景だけは私の頭の奥底に残り続けている。
【落書きの家】
オススメ度:★★★★
住所:埼玉県蓮田市
アクセス:蓮田駅よりバスで程なく
予算目安:0円
※記事執筆時点での情報

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