新宿の老舗酒場「どん底」へ潜入。文化人たちが愛した異空間居酒屋を歩く

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1.新宿三丁目の路地裏に残る戦後の酒場

新宿三丁目の飲み屋街を歩いていると、妙に気になる建物が現れる。
壁一面を覆う蔦。薄暗い路地。木造の古びた外観。繁華街の真ん中にありながら、その一角だけ時間の流れが違う。

どん底

他の飲み屋とはちょっと違った雰囲気を醸し出すのが、今回の目的地。1951年創業の老舗居酒屋「どん底」である。
まず名前のインパクトが強すぎる。
初見だとネタ系居酒屋にも見えるが、実際は新宿でもかなり歴史のある名店だ。

かつては三島由紀夫も通ったことで知られ、多くの作家や文化人に愛されてきた。
店名はロシアの作家 マクシム・ゴーリキー の戯曲「どん底」に由来するという。

現在の建物は1955年竣工。
戦後の新宿の空気を、ほとんどそのまま残しているような建築だ。正直、かなり怪しい。
だが、この怪しさこそが魅力である。

2.狭くて騒がしい。なのに妙に居心地がいい店内

店内に入ると、まず驚くのが空間の密度だ。
3階建ての木造建築なのだが、とにかく狭い。通路も細いし、席同士の距離も近い。
しかし不思議と窮屈さより熱気が勝つ。

木材、レンガ、古材、手作業感のある内装。
和風とも洋風とも言い切れない雑多なデザインが混ざり合い、古の新宿のイメージをそのまま立体化したような空間になっている。

どん底

訪れたのは18時頃だったが、すでに店内の皆はかなり出来上がっていた。
大声で笑うグループ客、静かに飲む常連、一人でカウンターに座る若い女性。
客層が妙に幅広いのが面白い。

どん底

古い酒場というと年配客中心のイメージがあるが、どん底は若い世代もかなり多い。
単なるノスタルジー消費ではなく、現役の飲み屋として機能している。
ちなみに人気店なので予約推奨である。店外には待ち客もかなり並んでいた。

3.が今も残る文化人の溜まり場っぽさ

どん底が独特なのは、単なる居酒屋以上の空気感を持っていることだ。

店内には絵画やポスターが飾られ、どこかサロンのような雰囲気が漂っている。

実際、昔の新宿は作家、演劇人、学生、映画関係者などが入り乱れる街だった。その空気の残り香が、この店にはまだ残っている。
吹き抜け構造になった内部もかなり印象的だ。

どん底

上階から下を見ると狭い空間の中に人と酒と声がぎっしり詰まっていて、建物全体がひとつの巨大な酒場装置みたいに見えてくる。

最近のチェーン居酒屋は効率的だが、こういう熱量はない。
少し不便で、かなり古くて、少し雑。しかし、その雑味込みで空間が成立している。
新宿という街のカオス感とかなり相性がいい酒場だと思う。

4.料理がちゃんと美味いのもズルい

正直、建物と雰囲気だけの店かと思っていた。
だが料理も普通に美味しい。

サーモンのマリネはしっかり酒向けの味付けで、サラミとハムの盛り合わせもかなり良い。気づくと酒のペースがどんどん上がっていく。

牡蠣のオイル漬けや唐揚げも安定感がる。
さらに驚いたのが接客である。店員の人数が多く、グラスが空きそうなタイミングで自然に声をかけてくる。
老舗特有の怖さみたいなものもなく、むしろかなりフレンドリーだ。

どん底

最後に注文したチーズオムレツも絶品。
気づけばかなり長居してしまい、お酒と空間に酔いしれた。

5.新宿で生き残った奇跡みたいな酒場

新宿は再開発が進み、古い店や雑居ビルが次々消えている。
そんな中で、どん底は戦後から続く空気を今も残している。

もちろん綺麗ではない。狭いし古いし、雑然としている。
だが、それがいい。

むしろ整いすぎていないからこそ、人の熱気や酒場の生命力がダイレクトに伝わってくる。

店名だけ見るとインパクト先行のキワモノにも思えるが、実際はかなり真っ当な新宿文化遺産だった。
新宿のディープスポットを探している人にはかなりおすすめである。

【どん底】
オススメ度:★★★★
住所:東京都新宿区新宿3-10-2
アクセス:新宿三丁目駅から徒歩約2分
営業時間:
 平日: 17:00~24:00
 土曜、日曜、祝日 11:30~24:00
定休日:原則なし
予算目安:3000円
※記事執筆時点での情報

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